2021年06月07日

白銀の墟 玄の月(十二国記)・読了

読んだのはもう1年くらい前になるのですが、なかなか感想を書く機会がなかったので、この機会に書いてみます。

十二国記を読み始めたとき、このシリーズは大きく分けて陽子の話と泰麒の話の2つが軸になっている、と考えていました。というのも、このシリーズで2作以上主役扱いになっているのがこの2人だけだったから。
でも、シリーズを読み進めていくとどうも陽子は後々「黄昏の岸 暁の天」で泰麒を助けるという役目があるために事前に掘り下げられていただけで、実際は泰麒が大きな軸になっている、というのがわかりました。
泰麒は生まれる前に蓬莱に流されたものの「風の海 迷宮の岸」で蓬莱から連れ帰られて王を選んだわけですが、「黄昏の岸 暁の天」で王とともに行方不明になって再び蓬莱へ流れてしまます。最後の最後で麒麟として全ての能力を失った上で再び崑崙に帰って来るわけですが、その再び蓬莱に流れたときの暮らしが「魔性の子」で描かれていたわけで、これはもう泰麒の話なんだな、と。そもそも「魔性の子」が1番早く出版されているというのもありますから、ここまでの十二国記は「魔性の子」の中の泰麒がなぜそういう立場に置かれているのかを壮大に説明する前振りだったのかな、とすら思いました。

※ここからネタバレありです。

で、今作「白銀の墟 玄の月」は全ての能力を失った泰麒が帰ってきた後の話。
本来泰麒が選んだ王である驍宗が治めるはずだった戴国は偽王の阿選が治めている……はずだったのに、いろんなものを放置して阿選は城の奥に閉じ籠ったまま。驍宗の味方を徹底的に排除する恐怖政治を敷いた後、全てを放り出してしまったようで、国の機関はかろうじて官僚たちが回している状態。
そんな中で泰麒が戴国に帰っては来るものの、角を失っているので本来感じるはずの王の気配が感じられず、わずかに残る驍宗の最後の目撃情報を追っている、という絶望状態から話はスタート。

この状態からどうやって驍宗を見つけ出すのかと思いながら読んでいると、次々に新たな問題が出てきます。
全く政治をしなくなった阿選は実は死んでいるのではないかという疑問が出てきたり、仲間と一緒に驍宗を捜していたはずの泰麒がいきなり単独行動で城に乗り込んで、阿選こそ新王だと宣言したり、戴国の片隅で大怪我をした武将らしき人の描写が度々入って来て、その人が亡くなったり。
阿選が生きているとわかったらわかったで、なぜ政治を放り出しているのかが不明なまま。驍宗を殺してまで手に入れたかった王座なのに、驍宗の信奉者たちを排除する以外何もしないのはなぜなのか。
ブラフと真実が入り乱れて話が進んでいくので、片時も目を離せない状態になり、ついつい先を読み進めたくなりました。

それで話の主軸である驍宗の探索が続くわけですが、驍宗は最後に目撃された場所からどこかへ落ち延びているから死んでいない(王が死んだときに鳴くという白雉が鳴いていないので)と思われていたのが、実は同じ場所に留まり続けている、とわかったときは、なるほどな、と唸りました。
この世界では王になると神籍に入って不老不死になるので、即死するような攻撃を受けない限り死なず、餓死もない。なので、満足に食料もない出口のない洞窟の中でも生きていられる、という。
大怪我をして亡くなった武将はブラフ、慢性的な物資不足の貧しい戴国であっても神に祈ってお供え物を川に流す親子の描写は単なる情景描写ではなく、そのお供え物が巡り巡って驍宗の元に流れ着いていろいろと役立つなど、実はそっちが伏線だったのかというあって、本当に飽きさせない展開でした。

また、読者として既に植え付けられていた麒麟とはこういう生き物だという先入観によっていい意味で騙される展開も多くて感心しました。
例えば、麒麟は慈悲の生き物で基本的に人を疑わない、というのがこれまで何度となく描かれてきたので、麒麟は嘘をつかない=泰麒が阿選が新王だと言っているのだからそれはもう真実なのではないか?、と思ってしまうわけですが、実は蓬莱で嘘にまみれた人間世界でもまれた泰麒は平気で嘘をつくようになっていて、阿選が新王だというのは嘘だとわかります。
そして、自らが選んだ王以外には決して跪かない麒麟である泰麒が阿選に対して血を流しながらも叩頭礼ができたのは角が失われているから可能だったのかな……とおぼろげながらに考えていると、最後の最後で実は角が復活していたことがわかる辺りは、本当に読者の心理誘導が上手いな、と感じました。
麒麟は血の穢れを最も嫌うという性質についても最後の最後でどんでん返しに使われていて、そういう風に使ってくるか、と感心しきりでした。
ただ、この辺りは「魔性の子」をちゃんと読んでおいた方がいいだろうな、と感じました。崑崙で蝕を起こして行方不明になったときの泰麒のイメージのままだとちょっとギャップがあるかも、なので。

作品としては今後短編集が出るとのことですが、長編としてはこれが最後のようです。
慶国も戴国もそれなりに明るい未来が見えているところなので、これで終わりでいいのではないかな、と感じています。
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2021年03月10日

創竜伝・完結

この作品と出合ったのはやっぱり高校の図書館で、完結まで追ってきた「アルスラーン戦記」「宇宙皇子」などと同じでした。
また、田中芳樹さんの作品として初めて読んだのが「創竜伝」の1巻でした。
当時OVAが発売されるなどもあって、タイトルを何となく聞いたことがあるくらいの認識だったのですが、流行っているなら面白いのだろうと思って読み始めました。
読み始めた当初は6巻くらいまで発売されていて、確か図書館では8巻くらいまで読んで、以降は自分で買って読むようになりました。

当時の印象だと、まあまあ面白い作品だな、という感じでした。
むしろ、同じ作者の別作品を読んでみようと手に取った「銀河英雄伝説」にドハマりしたくらいで、私の中での田中芳樹作品ランキングとしては、銀河英雄伝説>アルスラーン戦記>創竜伝>タイタニア>灼熱の竜騎兵くらいの順番でした。
ただ、当時の刊行ペースだと「創竜伝」が一押しという感じでしたし、バレンタインにチョコを送るとお返しがもらえるというのを「創竜伝」のあとがきである座談会で知ったというのもあって、チョコは竜堂四兄弟宛に送っていました。
まぁ、チョコを送った最初の年に阪神淡路大震災があって、お返しは寄付するという手紙が届いて心底ガッカリしたりとかもあったのですが(今なら確かにそうすべきだと納得できるのですが、当時は若かったこともあって納得できず)、翌年はちゃんとお返しが届きました。

その後就職してからはチョコを送ることもなくなったのですが、新刊チェックは欠かさず行って13巻までは発売日当日に買っていました。
ただ、12巻から3年ぶりに発売された13巻では、巻末の座談会で911テロの後のアメリカのやり方についてものすごい批判が書かれていて、本編よりもむしろその印象が強かったです。
政治的なこととかを作者がどう考えていようと私は気にならないタイプなのですが、巻末のおまけとはいえ登場人物の口を借りてその作者の思いを話しているという風に捉えてしまって、それはどうなんだろう、と思ってしまいました。
他にも、当時流行っていた終末論を皮肉たっぷりに煽っていたりもして、その座談会を書くために本編を書いてこの時期に出版したんじゃないか、とすら思ってしまって、本編のことはあまり記憶に残らなかったです。
まぁ、刊行ペースが早かったときは本編に結構な政治批判が入っていましたが、本来1990年代後半の時代設定だったのがそれを現実が通り越してしまったせいで、書ける場所が座談会しかなかったという風にも思うのですが……どうにもこうにも納得できませんでした。
11巻、12巻と番外編で久しぶりの本編再開というのもあり、ウッキウキで読んでみたら話はあまり進んでない上にあの座談会、ということで、いろいろショックでした。

※ここからネタバレ入ります

で、それから17年。
記憶している内容は、
・竜堂四兄弟イギリスで大暴れ(小早川奈津子も一緒)
・日本では富士山噴火中
くらいでした。

「アルスラーン戦記」はなんやかんや数年毎に新刊が出ていたので話をおおよそ覚えていたのですが、「創竜伝」はブランクが17年あったのと13巻ショックでかなり記憶が曖昧でした。

そんな感じで14巻を読み始めて大丈夫なのかな……と思っていたのですが、意外と大丈夫でした。
四兄弟たちが日本に帰ってきていて、小早川奈津子は京都幕府を立ち上げて日本から独立しようとしている、という部分から始まっていたものの、理由はよくわからなくてもこれはこれで話が理解できるからまぁいいか、と。
何やかんやで敵が襲ってきて、竜堂四兄弟は降りかかる火の粉を払っていく感じで話は進みましたし、その都度現状の説明があったりしましたし。

その後、14巻の終盤で敵の本拠地らしい場所がわかって、最終巻ではラスボスも登場して、読み終わってみれば悪くない終わり方だったかなぁ、と思えるようになりました。
他の田中芳樹作品にあるように、主要登場人物が死ぬとかありませんでしたし。
ラスボスを追いかけるためにまずは修業を始める、というところで終わっていたものの、四兄弟がどうにかして人間の世界で目立たないように暮らして行くのかを考えるというのではなく、仙界を拠点として新たな目標を見つけて終わるという形だったので、希望が持てる終わり方だったなぁ、と。
この終わり方だったら、別の組織がまたどこからかやって来て四兄弟を襲うとかもなさそうでしたし。元の生活に戻ってもまた繰り返しになる未来が見えるより、全く新しい世界になるならその方がずっとよかったと思います。
また、最終巻を読むまでなぜ12巻で過去の仙界での話を書いたのかわからなかったのですが、結末を読んだら納得できました。最後の最後で仙界がガッツリ絡んでくる展開だったので、これはあった方がよかったな、と。

ちなみに、散々大暴れした小早川奈津子に関しては、最終巻の終盤で体に取り込んでいた竜の血の効果が切れて死亡、となっていました。
誰かに倒されるのではなく、エネルギー切れでの死亡は彼女らしいと思う一方で、死ぬタイミングが絶妙によかったのはちょっと都合がよすぎる感じもしてしまいました。
エネルギー切れに関する伏線がもう少しあったら違ったのかもしれませんが。

その他、1巻発売当初は携帯電話もあまり普及していない世の中だったものが20年以上経過してしまったので、14巻以降は普通にみんなスマホを使って報道用にドローン飛びまくりでした。
あまり本編に関わらない部分ではあるのですが、その辺りは年代を本当の1990年代に縛らなかったんだなぁ、と妙に印象的でした。本編内での時間は1年経っていないってことになっていますが、その間にいろいろ発達したので現代に合わせたようでした。

ひとまず、完結を諦めていた作品がこうして完結してくれたのはよかったです。
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2018年01月05日

アルスラーン戦記・完結

※これは約1年3ヶ月前の記事「アルスラーン戦記・完結まで残り1巻における結末予想」の続きです。
また、最初からネタバレ全開です。
ご了承ください。


足掛け30年、私が本書に出合ってから20数年、ようやく完結しました。
長かった……本当に長かったです。
でも、無事完結するところまで読めて、無事最後の感想を書けて、本当によかったです。

それではまず最初に、結末予想はどこまで当たっていたのかを検証してみます。

Q1.アルスラーンと十六翼将の生死は?

本作は「銀河英雄伝説」と違い、ザッハークとの最終決戦後のエピローグが存在しました。
そこには十六翼将が全員亡くなるまでが描かれていたのですが、ここではザッハーク戦後に生き残っていた、という基準での生死とします。

A1.
アルスラーンは死亡。
生存者はエラム、ギーヴ、ファランギース。
残りの十六翼将は全員死亡。

やはりというか何と言うか、ここでも皆殺しの田中は健在でした。
もう最終巻冒頭から十六翼将死にまくりでした。
ギーヴとファランギースが生き残るのではないかということ、アルスラーンが死ぬのではないかということ、ダリューン以外の他の十六翼将は誰が死んでもおかしくない、という辺りは予想通りでしたが、まさか全員死ぬとは……しかもダリューンまで。
ダリューンはザッハーク戦直前までは生きていたのですが、ザッハークに殺されてしまいました。
ルクナバードを持ったアルスラーンが出る前にダリューンがザッハークとの直接決戦に出たので、これは死ぬ、というフラグがその時点で立った感じがしました。
ザッハークはアルスラーンとの一騎打ちではなく、生き残った十六翼将+アルスラーンの1対多数戦になるんじゃないかと思っていたのですが……その辺り、アルスラーンは正々堂々としていたということなのだと思います。

作中で何度も死線を潜り抜けていたキシュワード、ザッハークに対してあまり恐怖心のないジャスワント、登場が遅かったパラフーダ辺りは生き残るのではないかと思っていたのですが、全員死亡という結果に。

ナルサスの後継者的立場だと思っていたエラムが最後まで語り部として生き残った、ということに関してはちょっと意外でした。


Q2.ザッハークは封印することしかできないのか?殺せないのか?アルスラーンの命と引き換えに完全消滅させるのでは?

A2.
ザッハークは人間に作られた存在。
宝剣ルクナバードはザッハークを制御できなくなった人間たちが作った緊急対処用の装置。
ザッハークを殺したところで、また作られてしまえば復活してしまう。

この物語が始まったときから、この世界は魔法と魔物が普通に存在する世界で、ザッハークは自然発生した世界征服を狙う魔王、というように解釈していたので、実はザッハークは人間が作ったものだというのが出てきたときはかなりビックリしました。
言われてしまえばこちらの方がしっくりくるものではあるのですが。
この時代のザッハークはアルスラーンがルクナバードでなんとか封印しましたが、時間が経てば復活することもまたあり得る、という結末でした。
ラスボスの正体を見破ったら、あとは完全消滅させて後世の憂いはない、というのが定番ですが、そうはなりませんでした。


Q3.アンドラゴラスとタハミーネの実子は結局誰?

A3.
銀の腕輪を持っていた3人の女性は全員偽物。
2人の実子は男子で死産していた。タハミーネはその出産で子供が産めない体になっていた。

これに関してもかなり意外でビックリしました。
タハミーネ自身が実子は女子で、後継ぎにはなれないからどこかへ放逐された、ということを信じていたというのもあり、銀の腕輪を持つ誰かが実子なのだろうと思っていました。
真実はずっとアンドラゴラスが隠していて、タハミーネはもう子供を望めないとわかっていたからこそ実子に執着していた、ということのようでした。


Q4.パルスの周辺国家がパルスに攻め込んだけどどうなった?

A4.
ラジェンドラが治めるシンドゥラ以外は軒並み指導者が死亡。
のちの戦国時代へ続く前振りとなってしまう。

最終巻は冒頭からとにかく登場人物たちが死にまくりましたが、それは十六翼将に限らず、敵に関しても言えることでした。
ギスカール、ヒルメス、フィトナ、などの主だった敵将は何だかんだで死亡。
他にも、語られることはないかもと思っていたタハミーネ、宰相のルーシャンなどなど、とにかくどこの国でも中枢にいる名前のある登場人物たちは片っ端から死んでいく状態でした。

なので、最終的にはどこの国もトップ不在になって戦国時代突入、と。
本当、ここまで死ぬとは思っていなかったので、読み進める毎にこの人もこの人も……という状態になったときは、この話をまとめるには皆殺しにするしかなかったんじゃないかな、くらいに思いました。

そんなこんなでエピローグでは前述のように戦国時代に突入。
最後に再びパルスが国家としての足掛かりをつかんだあたりで終了、となっていました。


考えてみると、この作品は王道ファンタジーの形を取ってはいたけど、中身はその真逆だったなぁ、と感じます。
作者がこの物語のを生み出すきっかけになったのが、昔話で貧しい子が実は王子様だったとわかる話の逆をやってみよう、という発想だったというのは各所で語られています。そういう昔話の結末っていうのは、魔王を倒して世界に平和が戻り、人々は末永く平和に暮らしました、というのが定番ですが、こちらは何とか均衡を保っていた各国の情勢が一気に壊れて戦国時代突入、という真逆の結末。なので、最初からこういう結末になることが想定されていたのだろうな、と妙に納得したりもしました。

そして、ラストシーンについて。
年老いたエラムがアルスラーンと残りの十六翼将と共に旅立っていくところに、個人的にはエステルがいてくれたらなぁ、と思ってしまいました。
幻を見ているのはエラムなので、そこまで交流のなかったエステルがいないのは当然と言えば当然なのですが、アルスラーンとエステルにくっついてほしかった私としては、エピローグにエステルがいてくれたらなぁ、と思わずにはいられませんでした。
アルスラーンの遺言も、ダリューンと同じ墓に入れてくれ、でしたし。あぁ、エステルじゃないんだなぁ、と。アルスラーンからしたら、ダリューンは誰より自分に対して忠誠を尽くしてくれてましたし、誰より頼りにしていたので、それはそれで当たり前なのですが。

ただ、それ以外の部分については概ね納得できる結末でした。
ギーヴの過去は結局わからずじまいでしたが、それはそれでキーヴらしい感じがしますし。
メルレインはヒルメスに対して直接手を下すことはできませんでしたが、アルフリードの仇を一応取ることができていましたし。

20数年待って、この結末を見ることができたのは幸せだったと思います。
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2016年09月09日

アルスラーン戦記・完結まで残り1巻における結末予想

現在アニメ放映中の「アルスラーン戦記」。
アニメでは現在原作の第1部後半が描かれていて、おそらく第1部完結までは確実にアニメ化されると思われていますが、原作は第2部残り1巻、最終巻を残すのみというところまで来ています。
この作品に出会ったのはまだ私が高校生の時、「創竜伝」→「銀河英雄伝説」と田中芳樹作品に魅了されていたド真ん中の時期でした。
そして、この作品を初めて手にした時、既に原作は第1部が完結していて、第2部の9巻までは刊行されていました。第1部の段階で、「アルスラーン戦記は2部構成」「第1部は7巻、第2部は9巻」だと既に記されていて(記憶の中ではどちらも全7巻だったように思うのですが)、「銀河英雄伝説」のときもしっかりした構成でキッチリ10巻で終わらせているし、「アルスラーン戦記」も終わりがもう決まっているみたいだから、数年以内には完結するだろうなぁ、くらいに思っていました。
でも、ここからが本当に長くて、続刊が出るまで数年かかることなどザラ、昨年アニメ化したことでようやく完結まで見えてきた、という感じです。
第1部を読んだのがもう20年くらい前なので、おおよそのストーリーもほぼ忘れ去ってしまったため、アニメを見つついろいろ復習しているような感じです。


※ここから本作及び銀河英雄伝説のネタバレが多分に入ります。ご了承ください。続きを読む
posted by minerva at 11:20| Comment(0) | TrackBack(0) | 小説 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2011年01月10日

フルメタル・パニック!・完結

※最初からネタバレ全開で行きます。


完結した長編小説の中で、かなり久しぶりに満足できた作品に出合えました。
最後の方はかなり刊行ペースも落ちてしまいましたが、待った甲斐あってかなりいい終わり方だったな、と。

この作品を読み始めたのは、確か5~6冊くらいしか出ていない時で、お勧めの小説は何かありますか?とここで呼びかけた時に教えてもらったように記憶しています。

それまで小説と言えばライトノベルも含めてシリアスなものしか読んだことがなかったので、コメディタッチのこの作品は私の中ではかなり新鮮でした。
小説でも読んでいて笑えるのだ、と知りました。

ただ、ほぼコメディタッチの短編に比べて、当初本編はあまり好きにはなれませんでした。
舞台は現代日本なのに、不可視にできる人型のロボット同士で戦ったり、心の強さを物理エネルギーに変換して戦ったり、科学的に進み過ぎていることに対してかなり違和感がありました。
序盤で「この世界は進み過ぎている」と登場人物が語るシーンがあることでかろうじて納得はしていたものの、ウィスパードとは何なのか?、という謎解きが出て来るまでは、この作品は短編の力で持っているな、くらいに思っていました。

ついでに、かなめがウィスパードとして覚醒した後も、かなり後半になるまで敵が本格的に攻めてこなかったのも、このまま作者は完結させるつもりないのかな?、とすら思っていました。
「踊るベリー・メリー・クリスマス」辺りまでは、ずっとそんな感想でした。


それが覆されたのが、ラスト3巻。
まず最初に出てきたウィスパードとは何なのか、という謎解き。
ウィスパードは未来から送られてきた知識を受信して、それを現代に利用しているということで、数百年後の知識を受信していたら、そりゃオーバーテクノロジーにもなるよな、と。
後にこれは数百年後からの知識ではなく、未来のかなめが過去に向けて知識を送っていて、それが何百回も繰り返された結果、この世界の文明になったのだというのがわかるわけですが、こちらの謎解きの方が更に納得させられるというのはすごいな、と素直に感じました。

また、終盤はそのオーバーテクノロジーによって変わってしまった世界を本来の姿に戻すのを阻止する、というちょっと間違えば話の方向が明後日の方に行ってしまいそうなのを上手くまとめていて、その辺りもまたすごいな、と。
並行世界とか分岐未来とか、そういったものを観測できるとかまで話が広がってしまうとおかしなことになったと思うのですが、そういうものは存在するかもしれないけど観測することはできないし、世界が本来の姿になったとしてもそれがおかしいと感じることはない、というところに留めておいたのは本当に上手いな、と感じました。
もし私がこういう話を書いたとしたら、ここですごく風呂敷広げてしまうと思いましたし。

で、終盤で活きてくるのが序盤の世界観設定。
ウィスパードが生まれるまでは現実の世界とほぼ同じ歴史を辿っていたのが、ウィスパードが生まれたことで歴史が変わってしまっている、という。
例えば、この作品の世界では米ソの冷戦は終わっていなかったり、ソビエトも崩壊してなかったり、中国が南北に分断していたり。
この作品の世界では並行世界を観測することはできないけど、現実世界がある意味この世界からすると並行世界でもあるわけで、その辺りちゃんと最初から考えられていたのだろうな、と。
中盤までは行き当たりばったりの話になっているのかとも思っていましたが、全くそんなことはなく。
この辺りがすごく満足できた部分でした。

最後に唯一気になったところは、最後の戦い寸前で宗介に対して、

・宗介は平和な世界で暮らすべき人間だった
・宗介は戦いに向いてない
・宗介自身、ASの操縦に関しても才能があったわけではない

などなど、宗介は本来戦いの中にいるべき人じゃない、という描写はちょっと取ってつけたような感じがしてしまいました。
それまで宗介はASの操縦は天才的ってイメージを持っていたので、違和感がありました。
まぁ、宗介は唯一アーバレストやレーバテインを操縦できたというだけで、ASの操縦が天才的ということではなかったわけで、私の中でそういうイメージがあったから違和感が出ただけなのですが。

今後は短編が出るかもしれないとのことで、それにはちょっと期待しています。
久しぶりに楽しい話を読んでみたいと思っていたところですし。
posted by minerva at 21:23| Comment(0) | TrackBack(0) | 小説 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする