なにかストーリーで評判のいいゲームはないものか、と探していたときに見つけたのがこのソフトでした。
SWITCH版が出ていて、通販サイトなどのレビューでかなりの高得点が付けられていたので、これはまず間違いなく面白いのだろう、という確信は最初から持てていました。
ただ、フルプライスで買うのはなぁ……とずっと思っていたところ、発売から約1年で半額セールがあったので買ってプレイすることにしました。
一般的なADVは選択肢でストーリー分岐するとか攻略キャラを選ぶのですが、このゲームはまず3本のシナリオが途中まで進行し、3本とも特定の場所まで進行すると、それぞれのシナリオがエンディングまで見ることが可能になり、更にその後でメインストーリーが進む、という構成になっていました。
これが今までに見たことのない構成で、最初結構ビックリしました。
元々18禁のPCゲームとして発売された作品なのですが、ADVのPCゲームというのは主人公がいて、その主人公が特定のヒロインを選んでシナリオが分岐し、最終的に個別のエンディングに到達する、というものがほとんど。そうでなくても、主人公は1人だし、全ての女性キャラは主人公以外と関係を持ってはいけないとかの縛りがあるものなのですが、最初に見ることになる3本のシナリオは全て主人公が違うので、そもそものADVの大前提が崩されていました。
ただ、ヒロインが全員白髪赤目の女の子で声優も同じ、3本のシナリオを読むと、主人公の年齢も時代設定もそれぞれ違うものの似たようなセリフであったり登場人物が出てきたり終盤に同じ展開があったり、何かしら横の繋がりがあるだろう、というのは示されていました。
最初に思ったのは、これは輪廻転生の話なのかな、ということだったのですが、最後のメインストーリーが始まったらその予想は全くの的外れだったとすぐにわかりました。
その後のメインストーリーの構成は素晴らしかったです。
綿密に伏線が張られていて、その出し方も非常に上手くて、プレイヤーの印象にちゃんと残るくらい何度となく印象付けるようにイベントを出し、伏線回収のときにちゃんと伏線が思い出せるようになっていて。
確かにこれは評判がいいはずだ、と納得しました。
また、余談として、作中の用語解説としてTIPSがあるのですが、普通に用語説明のときもあれば、ネタのような文章もあったりして、結構楽しく読めました。
この感じは「街」とか「タイムトラベラー」をプレイしていたときをちょっと思い出して、シナリオが上手い人はこういうところも上手いのだな、と感じました。
では、ここからネタバレありの感想です。
まずは、CASE-1について。
主人公は私立高校の非常勤講師で、結婚はしているものの既に夫婦仲は冷めきっていて必要最低限の会話しかない状態。そして、ヒロインは高校の生徒・波多野凛。
主人公と凛の年齢は倍以上離れている上に不倫が絡んでくるので、いきなり攻める話だな、と感じました。
主人公はかつて小説家を目指していて、凛と出会ったことで再び小説を書いてみることにするわけですが、この再び小説を書くことに対しての妻の言葉が結構きついのだけど的を射ていて、印象に残りました。
「書きたいものを書いてそれが売れていたら、あなたは国語教師なんかしていない」
「自分の筆力に一番自信をもっているのってどんな人たちだか知ってる 一作も書き上げたことのない人たち」
などなど、夫が再び書いてみた文章を一行も読まずに言い放つあたり、冷めきった夫婦を象徴しているように感じました。
その後、凛が妊娠していることがわかって、主人公に何も言わずに旅立つところでエンディングとなって、これで終わるの!?、とビックリしました。
別れで終わる話って早々ないよな、と。
続いてCASE-2。
主人公は寂れた酒場の店主で、アルバイト的に演劇の脚本書きをしている青年。
後々名前がシェイクスピアだと判明し、ヒロインのオリヴィアが貴族の庇護から離れて王宮からの援助を受けられるようにする話でした。
CASE-1の舞台は現代でこちらは中世ヨーロッパなので、CASE-1と一見何もつながりがないように見えましたが、どちらの主人公も文章を書くという流れの中で、「書けばいいんだよ、鼻歌でも歌うみたいに」
というセリフが出てきて、これは横の繋がりがあるのかな?、と感じ始めました。
また、最終的に別れでエンディングを迎えるところ、直前に主人公とヒロインが同じ内容の夢を見るところが共通していて、これはあえてこの展開なのだろうな……と思うようになりました。
続くCASE-3。
主人公は不登校の高校生で、ヒロインは教育実習に来た大学生。
カメラマンだった主人公の亡き母がハレー彗星を撮影しようとしていた場所を探す、という話でした。
他の話に比べるとコミカルな感じで、ヒロインのすもも以外にも梓姫という女性が主人公の近くにいる、というのがちょっと珍しいな、と感じました。
この話にはCASE-2に出てきた英語交じりで話すスペンサーという同じキャラが出ていて、やはり他の2本との共通点がそこかしこに見えたりはしたのですが、最後に訪れる別れが希望的な別れとなっていて、その辺りちょっと違っていました。
そして、全ての話が終わった後に始まるCASE-0。
CASE-1~3をプレイしている途中で、CASE-1~3の話は世凪という少女が見ている夢を主人公の海斗が受信しているということが明らかになるわけですが、その夢は世凪が作った小説をもとにしているということが割と序盤で明かされます。
この設定を知ったとき、だからどの話のヒロインも世凪に似ていてどこかしらで横の繋がりがあるようになっていたんだ、と納得できました。
その後、現在の世界が遺伝子変異して紫外線に極端に弱くなった人類が地下空間で生活しているとか、海斗の母は体が少しずつ動かなくなる謎の病気で死ぬとか、世凪には自分の思い描いた世界を人に見せる能力があるとか、この世界独特のいろんな設定が出てくるのですが、戸惑うことなくすんなり受け入れられる流れになっていて、その辺りの流れも上手いな、と感じました。
どこぞのゲームのパルスのファルシが……みたいな、理解するだけでも結構大変ということもなく、スルスル設定も話も頭に入ってきました。
終盤で序盤の設定が一気に覆される場面もあるのですが、その辺りもしっかり伏線が張ってあったので、戸惑うことなく受け入れられました。
それで、中盤で世凪がアルツハイマーの原因遺伝子を持っていて、今は問題ないけどいつかいろんなことを忘れてしまうということが判明するのですが、ヒロインが記憶喪失になるとかどんどん退行していくとかそういう話はいくつか見たことがあるものの、いずれ自分がそうなってしまうことをヒロイン自身が自覚している、という話は見たことがなくて、この辺りの葛藤もすごく見応えがありました。
主人公自身は完全記憶という全てを覚えているという特性があるだけに、その対比もよかったです。
また、主人公自身は完全記憶のことを忘却障害とも言っていて、見る角度を変えてきているところなどもよかったです。
最終的には全ての設定やイベントが繋がっているというのがわかったのですが、無駄な話が一切なく、最終的にきれいな形でまとまっていて、よくこれだけのシナリオを組み上げたものだな、と感心しきりでした。
最後の最後、なぜ海斗が世凪の話を人々に聞かせているのかがわかった瞬間が1番の感動ポイントで、このときばかりは久しぶりにゲームをプレイしながら泣きました。
仮想世界ではそこに接続するすべての人の中に同じ人物のイメージが出来上がれば、たとえ死んだ人であっても存在できる、でもそんな人は神様みたいなもの、ということをあえて序盤で何度も言いながら、最終盤の世凪復活のときにあえて繰り返し言わないやり方とか、本当に上手いと思いました。
久しぶりにものすごくいいシナリオのゲームがプレイできたと感じました。
2025年05月03日
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