2024年07月06日

ドラマ「燕は戻ってこない」・感想

この話の主人公は北海道から上京してきたものの、東京で貧乏に苦しんでいる29歳の女性。
派遣で医療事務として働いてはいるものの、手取りは毎月14万円程度。
オンボロアパートに住み、外食もままならない生活で、派遣の雇止めも近く、いろいろ追い詰められているという現状があります。

ただ、この主人公・理紀がとにかく浅はか。
東京に出てきたのも、何となく東京に行けばいい生活ができるかも、みたいな憧れだけで、特にやりたいことがあったわけでもなければ、活かせる資格もない。北海道にいた頃は介護職だったというのに、おそらく介護関係の資格を取ることもせずにただただ東京に出てきただけ。
そういう人だから、稼げる仕事に就けるわけもなく、漫然と日々を過ごすことに追われています。
北海道にいたときにお世話になったおばさんが亡くなったと聞いても、帰省するお金もありません。
おばさんは、東京に出ていくなら200万円は貯めてからの方がいいと言っていたのに、そんなアドバイスなど右から左に聞き流して上京してきたものの、恩は感じています。でも、お金はありません。

そんな理紀の同僚の友人は同じように貧乏であることに加え、風俗で稼いだお金を男に貢いでしまうようなちょっと頭の悪い子。その子があるとき、卵子提供すれば50万円貰える仕事がある、と理紀に持ち掛けてきます。
卵子提供するということは自分の遺伝子を持った子供がどこかで生まれるかもしれない、ということで理紀は最初断るのですが、臓器提供だって似たようなもの、などなど説得されて卵子提供業者のサイトに登録してしまいます。

しかし、後日友人はサイトに登録していないと聞かされ、自分から誘っておいて登録していないってどういうこと?、と理紀は怒ります。
確かにそりゃ怒るよな、と思うわけですが、その友人に、私が風俗で働いているのは知っているよね?、同じように理紀を風俗に誘ったけど理紀はやらなかった、でも卵子提供はやることにした、そういう線引きをしたのは理紀だよね?、と返されて何も言えなくなってしまいます。
この辺りから、頭悪そうな友人の方がものすごい正論を言ってくるし、理紀の浅はかさも露呈して、一気に話に引き込まれるようになりました。

その後、理紀は代理母として白羽の矢が立つことになります。
理紀にはかつて悪い男に引っかかって中絶した経験があり、その1回妊娠したことがある、という経験を買われて、通常の代理母として受精卵を子宮に入れる方法ではなく、代理母を希望する夫婦の夫の精子を子宮に入れて人工授精をするサロゲートマザーにならないか、と誘われます。
報酬は最低で300万円。
悩みに悩むものの、お金の力に負けて理紀は代理母になることを決めます。

一方、代理母を依頼する夫婦はというと。
夫とその母は有名な元バレエダンサーで、数々の受賞歴を持ち、現在はバレエ教室を運営するお金持ち。
妻はイラストレーターとしてコンスタントに仕事を得ているものの、かつて略奪婚をした過去があります。
皮肉なことに、あなたの子供が産みたい、と迫って寝取って略奪婚したのに流産を3回繰り返して不育症と診断され、結局子供を産むことができなかったのに加え、元妻は再婚して2児の母になっているという状態。
夫と姑は自分たちの遺伝子を継ぐ子供を切望していて、母親の遺伝子はあまり当てにはしていないので、サロゲートマザー方式で問題ないという判断。
略奪婚をしたのに子供を産めなかった、という後ろめたさから、妻も代理母に渋々同意することになります。

この3人の初顔合わせの日。
理紀は代理母の代金として1000万円を要求し、受け入れてもらうのですが、その日のお礼として代理母の謝礼とは別に5万円を受け取ります。
手取り14万円のところにポンとやってきた5万円。
理紀はその足で、今までやりたくても出来なかった、カフェでオシャレな飲み物を買う、デパ地下でおいしそうな総菜やデザートを買う、というのをやってしまいます。
おそらく、近いうちに1000万円入るという打算もあったでしょう。
そして、家の冷蔵庫に総菜をしまっているときに、ふとこのお金があれば北海道に帰省しておばさんのお墓参りに行けた、ということに気付きます。
ここでもやはり理紀の浅はかさが出てしまったわけですが、でも、もし自分が理紀と同じ立場に置かれていたとしたら、散財してしまうかもしれないな……とも思えて、理紀の行動が理解できなくもない、と思ってしまう自分がいました。
こういう感じで、理紀の浅はかさにイライラしつつも、どこか共感してしまう、という場面が何度となく出てきます。

その後、前金200万円を受け取った理紀はきれいなマンションへと引越し、生活に余裕ができたと思って北海道へ帰省します。
サロゲートマザーとして出産すると決めたとき、便宜上依頼者夫婦は離婚して理紀は依頼者の夫と結婚していたので(そうすれば戸籍上夫の実子となる)、結婚報告という大義名分がありました。
それを知った夫は大激怒。
北海道なんて遠い場所に行ったら、バレないと思って飲酒や喫煙をするかもしれない、と長文のお怒りメールを理紀に送ります。
既に昔の同僚たちと飲酒していた理紀は、それを見てイラっとして、昔関係のあった不倫相手と再び関係を持ってしまいます。
この辺りもやっぱり理紀が浅はかなところ。
その場の感情で突発的に行動してしまうのです。
ただ、やっぱり理紀がイラッとするのもわかりますし、昔の男と関係を持つのはどうかと思うものの飲酒に関してはまだ妊娠していないならセーフだと考えてしまってもおかしくはないかな、と。
理紀の浅はかさにイライラしつつ、そう行動してしまう理紀の気持ちもわからなくはない、とやはり感じました。

しかし、東京に戻ってきて理紀は気付きます。
北海道にいたときは排卵日の6日前だから平気だと思っていたものの、ネットで調べたら精子は子宮の中で10日程度生きる可能性もある、と。
そして、人工授精を行った後で妊娠発覚。
理紀にはもう1人関係を持った人がいて、父親候補が3人いる状態が発生。
しかも、双子。
思い悩んだ末、堕胎して最初からやり直すと理紀は言い出すのですが、依頼者の妻がそれに反対。
自分は妊娠してもお腹の中で育てることができなかったという負い目から、堕胎させる選択肢が選べない妻。
このことは後々依頼者の夫も知ることになるのですが、自らが経営するバレエ教室で伸び悩む生徒の親に「人は遺伝子の奴隷ではない」と口をついて出た自らの言葉にいろいろ考えさせられ、自分の子供でなくても生んでほしい、という結論に達します。

そんな中、理紀はつわりに苦しむことになるのですが、ここに依頼者の姑が理紀の世話をしに理紀の部屋を訪れます。
登場人物の中でこの姑が1番息子の血を引いた子供を望んでいて、代理出産の費用も全額負担するほど。
ことある毎にちょいちょい口を出してきて、過去のことを引っ張り出しては、やっぱり略奪婚なんて認めるんじゃなかったとか言ってみたり、出産まで理紀と同居しましょうと提案してきたり、とにかく自分本位で選民意識が高い人だな、という印象でした。
妊娠しているのに荒れた食生活をしている理紀を見かねて、つわりの最中でも食べやすい作り置きの総菜を大量に作ったり、サプリを用意したり、いろいろとかいがいしく世話をする中で理紀が代理出産を引き受けた経緯を聞き出して、割と神妙に聞いていたので、同情するところがあったのかな……と思っていました。
そうしたら、帰宅した姑が、あれが同じ人間だとは思いたくもない、あれは別の生き物だ、と吐き捨てるのです。何の努力もせず、甘えて生きてきただけの人だ、と。でも、そんな人に頼らないといけない自分がいる事実もわかっている、と。
これを聞いたとき、あぁこの人はバレエダンサーとして成功するためにものすごく努力したのだろうな、と感じました。だからこそ、努力してこなかった人が普通の幸せが欲しかったと言ったところで共感は出来なかったのだろうな、と。
このシーンが出てくるまで、姑に対してはマイナスイメージしかなかったのすが、この場面を見て少しプラス部分が生まれました。

そして、ついに出産。
早期破水で帝王切開になったものの、無事双子が生まれました。
これで双子を引き渡せばビジネスとして終了するのですが、出産後に高熱が出たり、母乳が出ることで体が母親になっていることを実感し、生後2ヶ月までは育ててほしいと頼まれて育てたことで、理紀の中で意識が変わっていきます。

結果。
男の子は依頼者夫婦に渡し、女の子は自分で育てるという結論に達したところで終幕、となりました。
この結末を見たとき、これって理紀の浅はかさが最後の最後にも出てしまった結果なのではないかな、と感じました。
出産と育児を経験したことで赤ちゃんに愛着が湧いてしまって、契約上2人は無理だけど突発的に1人は育てたいと思ってしまったのではないかな、と。
で、いずれ後悔することになるのではないかな……と。
依頼者夫妻は子供の遺伝子検査をしないことに決めていましたが、理紀は出産前に誰の子か気になるから遺伝子検査はしてほしいと言っていたので、いずれ自分で調べて本当に父親にいろいろ迫るかもしれませんし、後々生活がきつくなってきたら虐待に走りそうな感じもしましたし、恵まれた環境で育つ双子の片割れのことを知った子供が何を思うのか気になったりもしました。

ということで各話放送後にいろいろ考えてしまうことがあった以上に、最終回後にいろいろ考えてしまう、そんな話でした。
ただ、代理出産についての法整備が進んでいない今の日本だから生まれた話でもあると思いました。
最終的には爽快感など皆無で、一通り見ると気分的に落ち込むことの方が多い作品ではありましたが、それでも見てよかったと思いました。
posted by minerva at 17:40| Comment(0) | 日常 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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